RME 社製の 24bit/96kHz マルチチャネル A/D装置は,下記の 3 つの装置から 構成される.
RME HDSP I/O ボックス: RME HDSP Multiface AE,
RME HDSP インタフェース: RME HDSP PCI カード,RME HDSP CardBus カードのいずれか
RME HDSP PCI-Express カード,および RME HDSP Express カードは,動作未確認であり,現在サポート外である.
マイクロホン用プリアンプ: RME OctaMic-II.RME OctaMic や YAMAHA HA-8 も使用 実績があるが,これらのモデルは製造中止になっている.
ただし,マイクロホン用プリアンプは,必ずしも必要ではなく,録音レベルを 確保できるならば,接続する必要はない. これらのハードウエアは,添付マニュアルを参照して,PC に接続する.
Multiface を Linux にマルチチャネル A/D機器として認識させるためには, ALSA デバイス用汎用ドライバと,Multiface 用のファームウエア及び, ソフトウェアをインストールし,パラメータを設定する必要がある.
以下のインストールは,パッケージからインストールする方法を強く 推奨する.ソースからコンパイル,インストールという方法もあるが, 他のソフトウェアとの競合が起り,コンパイルとインストールが見かけ上, 成功しても,実際には音が再生・録音できないという現象に陥りやすい. 特に pulseAudio との競合が起るので注意が必要である.各自のシステム 環境に強く依存するため,ソースからのインストールの具体的な解説は割愛する.
以下パッケージから,ALSA デバイス用汎用ドライバのインストール方法を 説明した後に,Multiface の初期化に必要な hdsp コマンドを使用可能にするための インストール作業について述べ,hdsp コマンドによる設定について述べる. 最後に,HARK を使った録音ネットワークの例題について解説する.
ALSA デバイス用汎用ドライバ (alsa-lib, alsa-driver) は, インストールされていることが多い. インストールされているか確認するには,以下の太字の部分を入力する. $>$ はコマンドプロンプトを表す.イタリック体部分のメッセージが表示されれば, alsa-lib,alsa-drive がインストールされているので,これらのインストールは 必要ない.Version 番号は,使用環境によって異なるので作業例中の Version 1.0.24 は,各自の使用環境で異なるバージョン番号を示す場合がある.適宜読み換えて 作業を進める.今回のテスト環境では, Version 1.0.24 を使用した.
> cat /proc/asound/version Advanced Linux Sound Architecture Drive Version 1. 0. 24.
インストールされていなければ,次の節の作業で自動的に自動インストールされるの で,このまま次節の作業に入ればよい.
必要なパッケージは, 以下の 2 つである.
alsa-firmware-loaders
alsa-tools-gui
これらのパッケージのインストールには,
Synaptic パッケージマネージャ
apt-get
のいずれかを使用する. 以上のパッケージをインストールすることで,Multiface の設定に 必要な以下の 3 つのコマンドが使用可能になる.
hdsploader (Package : alsa-firmware-loaders)
hdspconf (Package : alsa-tools-gui)
hdspmixer (Package : alsa-tools-gui)
apt-get を使用したインストール例を示す.
> sudo apt-get update > sudo apt-get install alsa-firmware-loaders > sudo apt-get install alsa-tools-gui
最後に,multiface_firmware_rev11.bin を入手するために, alsa-firmware を alsa の Web サイトからソースをダウンロードする. (http://www.alsa-project.org/main/index.php/Main_Page). 2011/12/13 現在,利用可能な最新バージョンは, 1.0.24 である. alsa-firmware-1.0.24.tar.bz2 をダウンロードする. ダウンロード後,ファイルは,システムメニューの「場所」「ダウンロード」に 保存される.これを,「場所」「ホーム」にコピーすると作業しやすい.
適当なディレクトリにダウンロードしたファイル alsa-firmware-1.0.24.tar.bz2 を コピーする.最初に bunzip2 と tar でファイルを展開する. その後,コンパイル作業に入る.具体的な作業手順を 以下に示す.
> bunzip2 -d alsa-firmware-1.0.24.tar.bz2 > tar vfx alsa-firmware-1.0.24.tar alsa-firmware-1.0.24/ alsa-firmware-1.0.24/multisound/ 中略 config.status: creating aica/Makefile config.status: executing depfiles commands > make > sudo mkdir -p /lib/firmware/hdsploader > sudo cp hdsploader/multiface_firmware_rev11.bin /lib/firmware/hdsploader/ > sudo cp hdsploader/multiface_firmware_rev11.dat /lib/firmware/hdsploader/
以上で, hdsp コマンドがインストールされて Multiface の操作と設定が可能になった.
必要な hdsp コマンドは hdsploader, hdspconf, hdspmixer の3つである. これらのコマンドを順に説明する.
hdsploader
hdsploader は,multiface の FPGA を初期化する firmware プログラム (multiface_firmware_rev11.dat)をアップロードするコマンドである. 以下に実行例を示す.エラーメッセージ (Hwdep ioctl error on card hw:0 : Device or resource busy.) が表示されるが,ここでは問題ないので無視してよい. 同一システム上で 2 度以上実行すると,エラーメッセージが表示される. OS 起動中に実行されるシステムの場合には,この作業で必ずこのエラー メッセージが表示される.
# hdsploader hdsploader - firmware loader for RME Hammerfall DSP cards Looking for HDSP + Multiface or Digiface cards : Card 0 : RME Hammerfall DSP + Digiface at 0xf9df0000, irq 16 Upload firmware for card hw:0 Hwdep ioctl error on card hw:0 : Device or resource busy. Card 1 : HDA Intel at 0xfdffc000 irq 30
hdspconf
hdspconf を実行すると,Multiface の設定用のウィンドウが開く. サンプリング周波数を設定できる.他の項目は Multiface のドキュメントを 参考にする.図 8.4 に設定用のウィンドウ例を示す. 設定可能なサンプリングレートは,32kHz, 44.1kHz, 48kH, 64kHz, 88.2KkHz, 96kHz である. ここでは,32kHz が選択されている.
hdspmixer
hdspmixer を実行すると,ミキサーの GUI が表示される. 入力レベル,出力レベルの調節と確認が可能である. 図 8.5 にミキサーの表示例を示す.