4.5 サンプリングレートはどう設定したらいいい?

Problem

デバイスから音響信号を入力する際に,どのようにサンプリングレート を決めたらいいか分からないときに読む.

Solution

特別な理由のない場合は,サンプリングレートは16kHzで良い. そうでない場合は,エイリアスが生じない範囲で最も低いサンプ リングレートを用いる.

サンプリングレートを設定する際には,エイリアスが発生しない ように考慮する必要がある.サンプリングレートを半分にした周 波数はナイキスト周波数と呼ばれ,このナイキスト周波数を越え る周波数成分をもつ信号はサンプリングを行う際にエイリアスが 生じる.そのため,入力信号にエイリアスが発生するのを防ぐた めには,可能な限り高いサンプリングレートを用いることが好ま しく,最も高いサンプリングレートを選んだとき最もエイリアス が起きにくい.

一方でサンプリングレートを高くすると,処理するデータの量も 増加し計算コストが増大する.そのため,サンプリングレートを 設定する際には必要以上にサンプリングレートを高くしない方が 良い.

Discussion

音声のエネルギーは帯域幅にして10kHz 以上に達するが,エネルギーは 低周波成分に多く存在する.そのため,たいていの 目的に対しては低い周波数帯域だけを考えれば充分な場合が多い. 例えば,電話の場合はおよそ500Hz から 3500Hz 程度であり,5kHz 程度までの帯域幅があれば,容易に理解できる音声信号を伝送する ことが可能である[1]. 16kHz サンプリングの場合は8kHz以下の周波数成分はエイリアスを 生じることなくサンプリング可能であり,音声認識などでは用いら れることが多い.

[1] 音声の音響分析,レイ・D・ケント,チャールズ・リード著,荒井 隆行,菅原 勉監訳,海文堂,2004.